アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)は、ヨーロッパと日本、20世紀前半と後半、というように活躍した地域も時代も異なりますが、共に牧歌的で楽園のような風景を、自然への愛情を込めて描き出しました。人と自然が調和して暮らす世界への憧憬に満ちた彼らの作品は、色や形を愛で、描かれた世界に浸るという、絵を見ることの喜びを思い起こさせてくれます。両者の代表作を含む計114点を展示します。(公式サイトより)
今年に入ってからメトロポリタン美術館展やフェルメール展に行き、いわゆる「有名な絵画」をたくさん観てきました。西洋絵画の歴史を辿るような展覧会も好きですが、そろそろ違う感じの作品も観に行きたいなと思っていたところ、この展覧会が目に付きました。
ここ数年間、コロナの影響で世界中の美術館は苦境に立たされました。この美術館も例外ではなく、予定していた展覧会ができなくなったそうです。そんな中、どのような展覧会が開催できるか、苦境の中で生まれたのがこの展覧会だと初めに書かれていました。
一見なんの共通点もないように思える2人の画家。ですが、苦境に立たされながらも描くことをやめなかったという共通点がありました。公式サイトで「牧歌的」と表現されている2人の作品は、確かになんとも言えない素朴さを随所で感じました。色使いは鮮やかでも決して派手ではなく、自然が描かれた作品も華やかというよりは質素な雰囲気で作品自体の主張もそんなに激しくないように見えます。
一枚の絵画を観て電撃が走るような衝撃を受けた…!と言うような作品ではないのですが、どれもしんみり心に沁みてくるような魅力があったように思います。ポスターにも書かれている「じわじわ効きます、しみじみ沁みます」というフレーズ、うまいこと言ったな~と思いました。
藤田龍児の作品は現実の風景を描いているかと思えばそうでもなさそうな風景もあって、ちょっと不思議な雰囲気がありました。また、木の枝や葉っぱの描き方にとても特徴のある人だなとも思いました。ちょっと現実離れしているような細い木に葉脈まできっちり書き込まれた葉っぱ。じわじわきます。
そしてアンドレ・ボーシャンの作品は↑これが一番好きでした。自然豊かな背景、ど真ん中の美しい花々。ちょっと風変わりな絵だと思うのですがそこまで捻くれた感じがせず、この構図と色使いなのに素朴さがある…そんなところが気に入りました。
恥ずかしながらこの2人については今まで全く知りませんでした。このような機会がなければ今後も知らないままだったと思います。今回行くことができて良かったです。
牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児 | 東京ステーションギャラリー
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