ルール展とは
ずっと前から注目していた「ルール展」に行ってきました。ルールとは何か、なんのためにあるのか、そんなことを日々考えている人も考えていない人も、自分で何かを考えるきっかけになる良い展覧会でした。若い人が多かったのも印象的でした。
本展は、日常のさまざまな場面で遭遇するルールの存在と影響を取り上げ、デザインによってどのようにかたちづくることができるのか、多角的な視点から探ります。
来場者同士で意見を交換してルールをつくったり、投票したことが展示に反映されたり、会場内にあるものの配置を自由に動かしたりして本展に参加することで、社会を構成するルールづくりを体験することができます。私たち一人ひとりが未来をかたちづくる一員として、ルールとポジティブに向き合う力を養う展覧会です。(公式サイトより)
公式サイトの説明を読むと能動的に参加しないと楽しめないように思えるかもしれませんが、そんなことはなく静かに会場を見て回ることも可能なのでご安心ください。でも、頭は回した方が楽しめる気がしました。
まず初めにこのような案内があります。好きなスタンプを2つ選んでガイドブックに押してみましょうということです。スタンプの内容は押さないとわかりません。
私が押したスタンプの内容は「はなうたを歌わなければならない」と「普段より大きな歩幅で歩かなければならない」の2つでした。こうやって展覧会の最初にルールを意識させようというものだと思います。面白いです。会場でフンフン言っている人間がいたらそれは私だったかもしれません。
「あなたでなければ、誰が?」という体験型の展示では、多数決について考えさせられました。定員14名で(これもルールですね)参加し、様々な質問にYESかNOで答えていくというものです。この展覧会に来た人の結果はこうでしたと示してくれるのですが、こうして自分一人の意見もひとつの「数」として組み込まれていくんだな…と思うと、不思議な感覚になりました。多数決といってもその中には一人ひとりの個がいるはずですが、そんな個の意見もまとめてひとつにされてしまう。多数決って実際どうなんだろう…と。
いろんなルール
ルールにも色々あります。ここでは法律の作られ方について図解がありました。読むのも嫌になってくるような複雑さですね…そう簡単に法律が作られるわけではない…と。このあたりはまだ教科書的な展示です。
が、この展覧会は教科書をなぞるような面白くない(すみません)内容では全くありませんでした。酒税法の改正と高い税からすり抜けるように新しい商品を開発してきたメーカーの流れを「いたちごっこ」のような状況として紹介していたのが上の写真です。ビール、発泡酒、新ジャンル…そんな事情があったのですね。
鬼ごっこにもこんなにたくさんのルールが!意識したことはありませんでしたが鬼ごっこの派生である氷鬼や色鬼は小さい頃やった記憶があります。そういえばあれも一緒に遊ぶ者同士で(暗黙の?)ルールが決まっていました。
死んだ後のルール…
ここでは書ききれないくらい興味深い展示だらけだったのですが、その中でも私が一番心に残ったのはこれでした。「死後の個人データ保護や肖像権に関するルールはまだありません」と書かれています。確かに…。
近年、亡くなった人の生前の様々なデータ(写真、動画、声など)を使って故人を復活させようと試みるプロジェクトを見かけることがあります。美空ひばりさんAIが歌っている映像を見たことがある人は多いかもしれません。確かこれも賛否両論あったように思います。この問題についてはまだ議論の途中…なのかもしれません。
私たちのルールが適用される範囲は、もはや死後にも及んでいる。と、解説文には書かれていました。自分が死んだらツイッターアカウントはどうなるんだろう…このブログは…?ほとんどの人がネットと繋がっている現代で、誰しもが無関係とは言えない問題なはずです。そう簡単に自分の答えが出るようなことではないですが、考える良いきっかけになる展示でした。
こんな展示も
「会場ルール変更履歴」という面白いものもありました。この展覧会は7/2に始まっているのでそろそろ1か月が経とうとしていますが、その間でこんなルールができました、という内容が貼られています。例えば、展示物に触れる人が多いので触れないでマークを追加しました、といったような内容です。これ、終わる頃にはもっと増えるかもしれませんね。展覧会自体が生きているような感じがして面白いなぁと思いました。
グッズショップの支払いコーナーにも展示物が!現金支払いのなんとわかりやすいことか。現代は様々なことがどんどん複雑化して、それと一緒にルールも増えているのかもしれません。
ルールとは何か
テーマがテーマなので固いイメージを抱く人がいるかもしれませんが、そんなことはなく気軽に楽しめる展覧会でした。何を考えるかは人それぞれ。答えを示してくれるようなものでもなく、その難しさが一筋縄ではいかない「ルール」というものなのかも…と思いました。私は人によって答えが変わるようなことを考えるのが好きなのでとても楽しかったです。
意識しているかしていないかの違いはあれど、世の中はルールで溢れていて身近なものも多いです。自分たちを縛り付ける面倒なものと一言で言ってしまえばそこで終わりですが、何故このルールがあるのか等、少しでも一人ひとりが考えることができれば…いろんなことが変わっていくのかもしれない、と思いました。
------------------------
美術館関連の感想まとめは【こちら】からどうぞ