ユキシロ日記

ゲームのプレイ日記をメインに、博物館、美術館、音楽など。雑多な趣味ブログです。

遠距離現在 Universal / Remote/国立新美術館/2024.04

本展は、日に日に忘却の彼方へ遠ざかる 、ほんの少し前の3年間のパンデミックの時期を、現代美術を通して振り返る展覧会である。

タイトル「遠距離現在 Universal / Remote」は、常に遠くあり続ける現在を忘れないために造語された。本来は万能リモコンを意味するUniversal Remoteを、スラッシュで分断することで、その「万能性」にくさびを打ち、ユニバーサル(世界)とリモート(遠隔、非対面)を露呈させる。コロナ禍を経て私たちが認識した「遠さ」の感覚、また、今なお遠くにそれぞれが生きていることを認識するのは重要なのではないかという思いが、この題名に込められている。(公式サイトより)

自分の頭で考えなければいけない系の展覧会の中でも難解そうだな…と思い少し尻込みしていたのですが、やっぱり気になったので行ってきました。想像通り鑑賞者に考えることを促す内容でしたが、こういうテーマを考えるのは好きではあるので行って良かったです。

展覧会のコンセプト

この展覧会の面白いところは、コロナ禍の3年間を強く意識しているにも関わらず、そこで展示されている作品はすべてコロナ禍より前(2019年より前)に制作されたもの、という点です。

それらはコロナ禍を意識したわけではない作品ということになりますが、コロナ禍を経験した私たちはそれらの作品をそれ以前と同じように観ることができますか?…という問いが投げられています。

8名と1組の作品はどれも全然違う空気感を持っていましたが、共通点を探すならば…どれも人間の孤独を表していたような気がします。人は常に孤独で結局のところ「独り」なんじゃないかな…と、そんなことを考えました。

技術の発展により人々は遠く離れた場所でも繋がることができるようになった。家にいながら世界を知ることもできる。展覧会名にも入っている「距離」という言葉。現代を生きる私たちには、いまいちピンとこない言葉になっているのかもしれません。

印象に残った作品

「とんぼの眼」 徐冰(シュ・ビン)

チンティンという女性と、彼女に片思いする男性、クー・ファンの切ないラブストーリーが語られる。しかし、この映画に役者やカメラマンは存在しない。全ての場面が、ネット上に公開されている監視カメラの映像のつなぎ合わせである。徐と彼の制作チームは、20台のコンピューターを使って約11,000時間分の映像をダウンロードし、若い男女を主人公にした物語に合わせて編集した。(公式サイトより)

約80分の映像作品です。時間と体力と気力に余裕があったら全部観たかったですが私は30分ほど観ました。

監視カメラで撮れた映像を繋ぎ合わせて物語を作る。言ってみれば勝手に作った捏造の物語です。しかしそれでも物語っぽく感じるところが面白いし怖くもある。

作者はこの作品を通して中国の監視社会を批判する意図があるわけではないと解説に書かれていましたが、監視カメラの映像だけで物語が作れる事実は非常にブラックで、色々考えさせられました。

「あなたが生まれてから」 エヴァン・ロス

《あなたが生まれてから》は彼が2021年から取り組んできた〈インターネット・キャッシュ自画像〉シリーズのうちの一つで、自身のコンピューターのキャッシュ(cache)に蓄積される画像データを抽出して空間を飽和させるインスタレーション。本作では、彼に次女が誕生した日以降にキャッシュされた画像を用いて没入的な空間を作り出す。(公式サイトより)

この空間に私一人…そんな贅沢(?)な状態で鑑賞しました。壁と床一面に張り巡らされているのは作者自身のコンピュータに残されたキャッシュ画像。作者が調べたであろうニュース記事や動画配信サイトのサムネイル、さらにはバナー広告や企業のロゴなど向こうから勝手に入ってくる画像も…。

インターネットと共に生きる私たちにとって身近な作品かもしれません。自分が死んだらパソコンに残ったキャッシュを全部消してほしいと思う人は少なくないと思いますが、これを見ると本当にそうだよな…と思います。こんな風に全部曝け出せないですよほとんどの人は…。

情報の圧が凄いし、キャッシュ画像でその人を感じられるという事実もなんだか怖いし、日頃からたくさんの情報を浴びながら生きているという事実を突きつけられた気がしてそれも怖いし、色々怖いですね。もう私たちは支配されているんでしょうね、情報に。

まとめのような何か

たまにですが、すべての情報を遮断して本当の意味で一人っきりになりたいと思うことがあります。昔からありましたがコロナ禍を経てそう思うことが増えたような気がします。

疲れていたんです。溢れる情報の多さと、やたら繋がりを大切にする社会に。

こんなことは今だから言えますが、コロナ禍で外に出づらくなった時、どこかホッとするような感覚もありました。みんなが「一人の時間」を大切にせざるを得なくなったような気がして。自分にとって必要な情報は何か、取捨選択を迫られるようになったことも良かった気がします。

その上で、人と人との「距離」についても考えるようになりました。私は音楽鑑賞も趣味ですが、ライブやコンサートは会場に行って聴いた方が良いということを、コロナ禍を経て実感しました。当時、多くの人がリモートでも演奏を聴く機会を作ってくれたことには感謝していますが、やっぱりこの部分の距離は絶対に近い方が良いんですよね。

距離…難しいです。もう何が近いのか遠いのかわからないですよね。いろんなものや人との「距離」はもう少し考えてみたい問題のような気がします。まだ頭がもやーんとしていますが、この展覧会は行って良かったです。

展覧会とは無関係なおまけ

この日は休日でしたが、以前も紹介したことがあるクッチーナ イタリアーナ アリア 六本木に行けました!

今回はしっかりメニュー名を覚えました!「真イワシと香草パン粉 タップナードソース」です!美味しいね!!!休日メニューだと前菜も付いてくるプランになっており、贅沢なランチとなりました。すべて美味しかったです。

遠距離現在 Universal / Remote | 企画展 | 国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

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