華やかに着飾る若者、渋い柄をスタイリッシュに着こなす大人の男性、奇抜なデザインを好むアウトロー。浮世絵にはこうしたお洒落な男性が次々に登場します。江戸時代、現代同様に男性もファッションを楽しんでいたのです。歌舞伎役者は江戸随一のファッションリーダーでしたし、日々の生活でも男性たちは着物だけでなく頭巾や煙草入れなどの小物、髪型にもこだわりを発揮していました。そしてその洗練された和装姿には独特の色気が漂い、江戸の男性像の大きな魅力となっています。
男性の和装に焦点をあてる本展では、和装男子の魅力を堪能するとともに江戸の豊かな服飾文化に触れてみてください。(公式サイトより)
太田記念美術館は浮世絵を扱う美術館です。ただ浮世絵を並べて展示するだけではなく、なんらかのテーマに沿って面白い展示の仕方をしていることが多い印象があり、今回のこの企画もずっと前から気になっていました。
流行は誰が作るのか
一つひとつの作品に解説パネルがあるので浮世絵に詳しくない私のような人間にも優しくてありがたかったです。そんな解説パネルのひとつに「歌舞伎役者は現在のタレントやYouTuberのような人気をあわせもつ存在だった」と書かれていてびっくりしました。まさかこの美術館でYouTuberという言葉を目にするとは思いませんでした。
当時の人気歌舞伎役者が身に着けていた衣服の色や模様がそのまま町民に流行るというようなことが頻繁にあったそうです。お洒落な若手イケメン役者は人気で影響力も凄かったそうで、まったく今と変わらないなと思いました(笑)
奢侈禁止令(しゃしきんしれい)が出され贅沢をするなと幕府から言われていた時代、それでも江戸時代の人々は見えにくい場所(着物の裏や小物等)に工夫を凝らすお洒落を楽しんでいたそうです。このあたりも今と変わらない意識があるような気がしました。
粋と色気とは
この企画展の副題です。深いテーマですよこれは!私も考えてみましたが難しかったです!趣味嗜好の話(というか性癖…?)にならざるを得ない気がするのですが、私も和装の男性好きですよ!!あんまり嫌いな人いないのでは!?
結局わからないままではあるのですが、展示されているたくさんの浮世絵を見て、多様な装いの男性を緻密に描きだす浮世絵の絵師が凄いなということはすごく感じました。ファッションに注目した見せ方をしている企画というのもあって、和装ならではの「模様」が目立つ浮世絵がたくさんあったのですが、この模様の描き込みが凄い。
鬼滅ブームで注目されている(かもしれない)市松模様も取り上げられていました。市松模様も当時の佐野川市松という人気役者が身に着けたことで大流行し、その名で呼ばれるようになったとありました。そんな市松模様も手で描かれています。なんて細かい作業なんだ…。
浮世絵はただの美術品ではなく、当時の文化や人々の暮らしがそこからわかる貴重な資料でもあるんだなぁと改めて感じました。また、江戸時代は面白い時代だなぁとも。
あ!そうそう、この展覧会のちらし(ポスター?)のデザイン、メンズノンノ的な…男性向けファッション誌のようなノリ、最高に好きです。
------------------------
美術館関連の感想まとめは【こちら】からどうぞ