ユキシロ日記

ゲームのプレイ日記をメインに、博物館、美術館、音楽など。雑多な趣味ブログです。

翻訳できない わたしの言葉/東京都現代美術館/2024.05

世界には様々な言語があり、一つの言語の中にも、方言や世代・経験による語彙・文法の違いなど、無数の豊かなバリエーションがあります。話す相手や場に応じて、仲間同士や家族だけで通じる言葉を使ったり、他言語を使ったりと、複数の言葉を使い分ける人もいるでしょう。言葉にしなくても伝わる思いもあります。それらはすべて、個人の中にこれまで蓄積されてきた経験の総体から生まれる「わたしの言葉」です。

この展覧会では、ユニ・ホン・シャープ、マユンキキ、南雲麻衣、新井英夫、金仁淑の5人のアーティストの作品を紹介します。彼らの作品は、みんなが同じ言語を話しているようにみえる社会に、異なる言語があることや、同じ言語の中にある違いに、解像度をあげ目を凝らそうとするものです。(公式サイトより)

言葉とは何か。そういうことを考える展覧会なんだろうなと行く前は想像していましたが、実際はもっと複雑で重みのある…人間一人ひとりのアイデンティティを考える。そんな展覧会だったように思います。

重み

ここが良かったここが良くなかったと簡単に言える感じの展覧会ではなかったですね…。会場内には5人のアーティストのエリアがありますが、どれも非常に重みのある空間(だと私は感じました)で、ちょっと胸が苦しくなるような…そんな感覚にもなりました。なんと言えば良いかわかりませんが、ズシーン…と沈む感覚…。

この展覧会を鑑賞している最中の私の感想は、正直これはアートではないな…というものでした。「作品」ということになってはいますが、作品と言うよりはそれぞれの皆さんの活動紹介といった感じだな…と。美術館にあるから作品に見えるかもしれないけど、外に出ればこれはアートではないな…と思ったんです。

しかしおそらくそんなことはどうでもよくて、美術館に展示するもの全てアートでなければならない決まりなんてありません。活動紹介でも別に良いんです。この企画がやりたいのは、作品の展示ではなくその先にあることを多くの人に考えてもらうことなんだろうなと、ちょっと時間が経ってから気付きました。

言葉とアイデンティティ

5人のアーティストはそれぞれ育ってきた環境も抱えている問題も何もかも違いますが、共通して言えることは皆さんそれぞれ「自分の言葉」を大切にしようとしているところでした。

ここで言う彼らの自分の言葉は、私が母語として日常的に使っている日本語ではありません。

私は日本で生まれ日本で育った日本人です。多少はあるかもしれませんが方言と呼ばれる言葉にも縁がありません。日本語以外の言語に触れた機会は学校で仕方なく習った言語がいくつかあるくらいで、ほかの言葉を習得しようと思ったこともありません。日本語は好きです。

そんな私はいわゆるマジョリティ側の人間なんだなとこの展覧会を通じて思いました。日本に住んでいる限り、日本語を使う人間は多数派で、それ以外は少数派となります。多数派に属する人間が少数派の気持ちを理解するのは難しいことだと思います。生きていて困ることがないからです。

なので、5人のアーティストたちのエリアはそれぞれ胸にくるものがありました。こんなにも自分の言葉を知ってもらうと奮闘している人たちがいる。半ば必死にも見えるそれらは、自分の言葉を使っていて困ったことがほとんどない私の胸を抉ってくるようでした。

言葉は社会と繋がっていて、個人のアイデンティティとも強く繋がっているんだなと思いました。仮に明日から日本語を使うなと強制されたら…。私も自分の中の何かが確実に揺らぐだろうなと思います。

わたしの言葉

ちょっと重苦しい気持ちになったのと同時に、この展覧会を経て思ったことがもう一つありました。

それは、自分の使っている言葉を大切にしたいということでした。

日本語という道具を使ってはいますれだけではなく、文章の雰囲気とか…そういうのも含みます。

幸い、言葉を使って自分の考えを外に出すのは好きです。このブログがそれそのものです。自分の思っていることを100%完璧に表せているかはわかりませんが、できるだけ考えたこと感じたことをそのまま残しているつもりです。

外に向けて公開している以上全世界に発信しているも同然なので、気を遣っている点ももちろんありますが、できるだけ自分だけの言葉でこれからもいろんなことを残していきたいと思いました。それが私にとって、自分の言葉を大切にするということなんだと思います。

(会場の最後にあるこのコーナーがとても良かったと思います。ここで自分の考えを整理するのも良いかもしれません)

そして、自分の言葉と同じように、他人の言葉も大切にできたら良いなと思いました。

展覧会とは関係ないおまけ

東京都現代美術館から数分歩いたところにあるナンディニという南インド料理のお店でランチを食べました!

ボリューミー!!!!!!!ゴールデンウィークのスペシャルランチメニューということでしたが量が…!量がすごい!!!ナンもカレーもビリヤニもケバブもあります。

わかりにくいですがうっすら〇が付いている料理、全部チキンです!!!チキンパラダイスでした。大満足。

翻訳できない わたしの言葉 | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO

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