SNSの「いいね!」や、おしゃべりの中での「わかる~~~」など、日常のコミュニケーションには「共感」があふれています。
共感とは、自分以外の誰かの気持ちや経験などを理解する力のことです。相手の立場に立って考える優しさや思いやりは、この力から生まれるとも言われます。でも、簡単に共感されるとイライラしたり、共感を無理強いされると嫌な気持ちになることもあります。そんな時には「あ、共感とかじゃなくて。」とあえて共感を避けるのも、一つの方法ではないでしょうか。
家族や友人との人間関係や、自分のアイデンティティを確立する過程に悩むことも多い10代はもちろん、大人たちにも、すぐに結論を出さずに考え続ける面白さを体験してほしいと思います。(公式サイトより)
タイトルを見て惹かれ、導入文を見て惹かれ。これは行かねば!と思った展覧会です。そして、本当に行って良かったです。
共感力
「共感力」という言葉を耳にするようになりました。他者の感情や他者が置かれている状況をくみ取る力…のことを言うそうです。試しにこの言葉でネット検索してみると、共感力を高めよう!という文脈の記事がたくさん出てきます。どうやらこの力は世間的には、高めた方が良いもののようです。
一方、この展覧会の挨拶文にはこのように書いてあります。「本展は、自分と相手を尊重するために、共感しなくても大丈夫、と提案するものです」と。…良い企画ですね!
会場には、よくわからない展示物が並んでいます。体験型のようなものも多々あり、そのほとんどは鑑賞者である私たちに問いを投げかけてくるような、考えることを促してくるような、そのようなものばかりです。
私はこのように頭を動かすことを要求される展覧会が大好きです!若者向けな雰囲気は出ていますが、決してそんなことはありませんよ!共感してほしいのに他者から共感を得られず悶々とする、他者に共感しすぎて自分が疲れてしまう。そういう経験をしているのは決して若者だけではないはずです。
わからないのが当たり前
「共感」というのは「わかること」だと思います。程度はあるかもしれませんが人間は誰しも孤独で、他者に自分を理解してほしいという気持ちが少なからずあるものだと思います。だから、他者に共感してもらえると嬉しい気持ちになります。共感してもらえないと寂しくなります。なんで私の気持ちわかってくれないのよ!!と、怒りがこみあげてくるかもしれません。本当は全然共感できないのに周りに合わせてわかる~と適当に言ってしまうことも、あるかもしれません。
最近色々動きもあるようですが、SNSは典型的な「共感」ツールのような気がしています。「いいね」の機能、まさにこれですよね。これをたくさんもらえると嬉しくなる人もいるそうです。本当に心から嬉しいと感じているのでしょうか。
私は、他者のことはわからないのが当たり前だと思っています。「わからない」が前提としてある感じです。なので、他者に私のことがわかるはずはないし、私も他者のことが全然わかりません。他人が何考えてるかなんてわかるわけないじゃん、という考えです。
いつから自分がこういう考え方をするようになったのかわかりませんが、この考え方をした方が人生が楽だと思うんです。話せばわかる?…わかりません、他人ですから。人は一人ひとり違い、考え方も千差万別です。全く同じ人なんていないのです。近年は多様性という言葉も広がり、様々なところで荒れたり揉めたりしているな…という印象ですが、これだって他人は自分とは違うんだ、一人ひとり違うんだ、ということを前提とすればそこまで大荒れにはならないのでは?と思います。
他人に何がわかる
そもそも他者に共感するって難しいことです。具体的には書きませんが、先日若いタレントが自ら命を絶ったニュースが入ってきました。テレビを見ない私でも知っている人でした。その人が何を考え何を思ってそうすることを決めてしまったのか、絶対に本人しかわかりません。他者は好き勝手想像しますが、知っているのは本人しかあり得ません。
必要以上に他者の気持ちを推しはかろうとすること、ちょっと気持ち悪いな…と思うことがあります。本人からしたら、お前に何がわかる、という気持ちなのでは?と…思います。そんなことばかりじゃないですか、最近の世の中(話広げすぎかも…)。みんな他人のことを気にしすぎなんですよ。わからないものをわかろうとしすぎなんです。
(↑あなたが考えたことを書いてみてください、というコーナー。私も自分なりに共感について考えたことを書いて貼ってきました。他人が書いたものを読むのも面白かったです)
共感できないけど尊重はする
あの人の言っていることは意味不明だ、おかしい、ネットで叩いてやろう!みたいなやつ、やめてほしいですよね。自分には共感できない=おかしい、という短絡的な思考が怖いです。
自分には共感できないけどそういう考え方もあるんだな、ふ~ん、くらいのノリで生きていければみんな楽になれるのでは?と思います。この展覧会もそのようなコンセプトだろうと私は思っていますが、共感できなくても尊重する気持ちを互いが忘れなければ、他者と良い関係を築けるような気がします。違いを受け入れる、的な。
口で言うのは簡単で自分で書いておきながら綺麗事言ってるな…と思わなくもないのですが、理想を書いてみたということで許してください。
展覧会の感想を全然書いていない気がしてきました。とても良い展覧会でした!!!意味がよくわからない映像を見て何だこれは…と考えたり、引きこもり当事者に思いを馳せたり、見えない場所にいる人のことを考えたり…。
こういうことを考えるきっかけを作ってくれるのも美術館や展覧会の良いところだと思います。ホックニー展に行く予定のある人はこちらも一緒に是非…!
同じ日に行ったデイヴィッド・ホックニー展の感想はこちら↓
デイヴィッド・ホックニー展/東京都現代美術館/2023.07
「あ、共感とかじゃなくて。」 | 展覧会 | 東京都現代美術館
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