「STAND UP! CLASSIC FESTIVAL」とは、2018年より横浜赤レンガ倉庫で開催し、のべ4万人を動員した国内最大級の野外型クラシック音楽祭。2019年以来、3年ぶりの開催となる今回は、豊島区制施行90周年記念事業の一環として、場所を新たに池袋エリアの3会場にて開催いたします。
旬の若手から実力派まで、豪華絢爛のアーティストたちが一堂に会し、一日中クラシック音楽をお楽しみいただけます。(公式サイトより)
STAND UP!CLASSIC FESTIVAL'22 in TOSHIMA 公式サイト
豊島区の民として意気揚々と出かけましたがあいにくの雨…。降水確率50%くらいの予報だったのでこれは降らないなと根拠のない自信を持ち、なんの雨具も持たずに行き見事に濡れながらたくさんの音楽を浴びてきました!(※運営からは雨具持参についてしっかり事前連絡がありました。全部私の自己責任です)
野外ステージで隣に座っていた親切な方に余っているのでとレインコートをお譲りいただきました。人の優しさに触れた瞬間でした。赤いレインコートのあの方、ここを見ているとは全く思いませんがありがとうございました。私も他人に親切にしたいなと思いました。
角野隼斗×フランチェスコ・トリスターノ/東京芸術劇場
ということでここからがフェスの感想です。まずは東京芸術劇場で行われたこちらに行きました。角野隼人さんとフランチェスコ・トリスターノ氏のコラボステージです。
ステージ中央にどーんと置かれた2台のピアノ。私はこのような2台ピアノのコンサート(?)にはあまり馴染みがなかったのですが、決して1台ではなし得ない何かがあったような気がしました。
初めの曲はボレロ。ボレロといえばいろんな楽器が次々と現れ同じフレーズが繰り返される過程でどんどん豪華になっていく…!というような曲ですが、今回は2台のピアノのみです。こんなボレロは初めて聴きました。前衛的な芸術作品のようなアレンジ、お2人の表現力も豊かでとても魅力的な不思議なボレロでした。
その後バッハの曲が入り一人ずつソロコーナーが入ります。角野さんの水の戯れ(好きな曲です。角野さんの演奏が聴けて嬉しいです)もフランチェスコ氏のソロ(ご自身作曲でしょうか…?とても好みの曲でした)も流れるようなピアノの美しい音色が素敵でした。
ラストは圧巻のラプソディインブルー。この曲もオーケストラだと豪華で華やかで音がたくさんあるイメージですが、たった2台のピアノでこの迫力とキラキラ感が出せるとは…!という感じでした。さすがの演奏でした。
お2人が知り合ってから1年ほど…ということでしたが、このような場で共演するのは今回が初とのことです。明後日にはブルーノート(すごい)でも共演するのだとか!
フランチェスコ氏の演奏は初めて聴きましたが、なんとなく角野さんと似たような雰囲気があるような気がしました。初めて会って初めてセッションをした時から意気投合したという話がありましたが、ああそうだろうな~という感じがしました。時代を駆け抜ける2人のピアニストの今後に注目ですね!きっとブルーノートでも輝く演奏を聴かせてくれることでしょう。
麻衣、菊池亮太、豊島岡女子学園高等学校コーラス部/GLOBAL RING THEATRE
東京芸術劇場のすぐ横に、GLOBAL RING THEATREという名の野外ステージがあります。私は池袋には割と長くお世話になっているのでこのステージができあがるまでの過程を見てきているのですが、しっかりとここで音楽を聴いたのは今回が初めてです。コロナの影響でせっかくできたのにほとんど使う機会がなかったステージだと思うので、これからどんどん色んなイベントをやってほしいですね。
そんな野外ステージではたくさんの出演者が一日の間でかわるがわる音楽を披露してくれました。私が聴いたのは第2部で、まずはこちらから。歌&ピアノ&合唱のコラボレーション!
事前になんの情報も仕入れずに行ったのですが、まさか大好きなジブリ映画「となりのトトロ」をこのような形で聴けるなんて思っていませんでした!シネマオーケストラコンサート(だったかな…?)のように、物語を音楽でなぞりながら進んでいくアレ。映像はありませんでしたが久しぶりにトトロの全編を見たような気分になれました。風の通り道は私が一番好きなジブリ曲です。トトロたちと木を成長させるあの名シーンが頭に浮かびました。大好きです。
麻衣さんは歌が素敵なのはもちろんですが朗読部分?もとても声が良くて絵本の読み聞かせを聴いているような温かい気持ちになりました。コーラス部の皆さん、あ~合唱って良いよね~!!!と学生時代を思い出させてくれるようなフレッシュな歌声が最高でした。そして菊池さん!彼はやはりプロだった。
菊池さんの生演奏を聴くのは初めてで今回楽しみにしていたのですが、生演奏どうこうより先に思ったのが「プロだ…」でした。彼のステージについてはこのあと書くとして、こちらのステージではあくまで伴奏というか、ソロパートはあったものの基本的に後ろで支える役割のようなピアノだったのですが安定感が凄かった。前にも思ったことがあったような気がしますが、菊池さんは共演する人たちによって自身の演奏スタイルを変えてくるというか、周囲を見て自分の役割をしっかり理解した上で演奏をしているような、そんな気がします。プロとしては当たり前なのかもしれませんがやっぱり凄いことだと思います。菊池さんに関しては今回いろんな人との共演があったので、ますますそう感じました。さすがでした。
紀平凱成、菊池亮太、ござ
続いてこちら3人のピアニストによるステージ。紀平さん→ござさん→菊池さんの順番で、途中ソロあり2台ピアノありといった盛りだくさんの激熱ステージでした。このあたりからがっつり雨が降ってきたので観客席はガサガサしていました(野外ステージなので周囲の環境音やカラスの鳴き声など何でもありな感じでした。これぞ野外)が、レインコートに身を包み謎のミノムシと化した観客たちも雨を忘れるような熱のこもった演奏の数々で、3人とも次世代を担うピアニスト!といった雰囲気がガシガシ出ていて輝いていました。
紀平さんはお名前を知っていましたがお名前しか知らなかった人で、初めて演奏を聴きました。カプースチンの難曲を軽々と弾き(私にはそう見えました)、スペインのエモーショナルなアレンジや自信のオリジナル曲披露。場慣れしている風にも見えましたが、菊池さんとのコラボでは初々しさを感じました。知ったようなことを書いてアレですがおそらく、若き天才ピアニスト~のようなことは言われ慣れていると思います。若い頃から注目され続けるというのは色々と大変なこともあると思うのですが、今回のような素敵な演奏を聴かせてもらった以上、今後に期待するほかない!と思いました。フレッシュというより、これからどんなことだってできる年齢の若き青年!といった印象を受けました。可能性しかない。
そしてござさん。ござさん!!!!何年振りかの生演奏…感無量です…。ござさん…大きくなられて(誰)…真っ青な衣装で出てきて驚きました…青…すごい青…。
ござさんに関しては毎回面倒な厄介古参オタクのような立場からの感想になってしまって自分でも若干の気持ち悪さを感じますが、だからといって今回が初見です!という書き方ができるわけもなし…。好きなように書かせていただきます。
ここ最近はちょっと色々疲れてしまい、ござさんに限らずネットでピアノを弾いている人たちの配信をほとんど聞いていません。毎日のように誰かしらのピアノ配信を聴いて、いわゆる推し活のようなことをしていた日々もありましたが、今はだいぶ落ち着いた感じになっています。なので、ござさんの演奏を聴くのは本当に久しぶりでした。
まず思ったことですが、ござさん本当に華やかになりましたね!演奏だけでなく本人から出ているオーラも。そしてトークも慣れているように感じました。人前に出ることに慣れたんだろうなぁと思います。これは昔よく演奏を聴いていた私が今回抱いた感想ですが、反対に変わらないな~と思ったこともあって、それは「即興の凄さ」です。
最初のショパンシンドローム(ショパンの曲を20以上集めてひとつにしたというとんでもアレンジ)もござさんらしさは存分にあったと思いますが、要所要所でしれっと雨にまつわる曲(あめふり、雨だれ等)をねじ込んでいましたね!!これ絶対アドリブですよね!!!今日が晴れていたらこうはなっていないはず。この即興力がござさんの最大の魅力だと私は今も思っています。自由で楽しそうで何をしているのか全くわからないけど聴いていてワクワクする。そんなござさんの演奏を久しぶりに聴いて、全く変わっていなくて、不思議な気持ちになりました。私をピアノの世界に引き込んだきっかけとなった人はやっぱりとんでもないピアニストでした。
そして菊池さん。ひとつ前のステージから引っ張りだこで大忙しな菊池さんですが、今回のステージはソロ演奏ということで、ワールド全開な感じでしたね。一度聴いてみたいと思っていた菊池さんのラフマニノフメドレーが生演奏で聴けて嬉しかったです。あまりにも綺麗でした。菊池さんはソロだと大暴れしている印象がありますが、少し前で書いた通り、人との共演だとがっつり空気を読んでくれますよね。ご自身に自覚があるのかわかりませんが、色々使い分けていて凄いなと思います。
しかし今回のござさんとのコラボはまるでソロで弾いている時のような暴れ方…いや、熱い演奏を聴かせてくれました。ござさんの演奏も熱かった。お2人は古い付き合いでこれまでにも色んな場所で共演されているので、たとえ打ち合わせがなくても即興で合わせられる息の合い方、まさに阿吽の呼吸でしたね!なんというか、用意された曲をたくさん練習して今日が本番です!という感じではないんですよねこの2人のコラボって。リアルタイムで作品が出来上がっていくような感じの音楽だと思います。その場でしか完成しない音楽。アンコール(あると思わなかった)も凄まじい熱量で雨が降っていることなんて最後はどうでもよくなっていました。
ござさんが最後に蛍の光をチラッと混ぜていて、ああ…となりました。素晴らしいステージをありがとうございました!!
まとめのような何か
いろんな音楽を浴びて楽しい一日でした。フェスと呼ばれる音楽イベントに行くことはあまりないので野外で音楽を聴くのも私にとっては貴重な体験でした。雨に濡れながら音楽を聴くのも貴重な体験だったと思います。家を出る前は雨か…嫌だな…と思っていたのですが、雨だったからこそ雨の曲を即興で入れてくれたござさんと菊池さんの粋な演出、これが聴けたので雨も悪くなかったかもと今は思っています。
今回私が聴いたステージは上記のみですが、このイベントはもっとたくさんの人たちがいろんな場所で音楽を披露してくれていました。このようなイベントがまた開かれるようになってきたことも嬉しいです。配信は聴いていなくても、情報を追っていなくても、音楽が好きということは変わりません。一度この人の音楽好きだ!と思った人の音楽を嫌いになることもありません。これからもマイペースではありますが陰ながら皆さんのことを応援しています。良いイベントでした!
過去の関連感想など
(厄介古参オタクを発動している感想が多いのでちょっと恥ずかしいものもありますが載せておきます)
NEO PIANO CO. LABO.(ねぴらぼ)と私のこと
NET PIANO SUMMER FESTIVAL 2020(ネピサマ)と私のこと
NET PIANO FUYU MATSURI 2021(ネピフユ) 感想
NEO PIANO CO.LABO.(ねぴらぼ) “Invention” 感想
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