開館当初からデザイン椅子の名品を館内に設置してきた「椅子の美術館」が、従来のデザイン椅子展とは異なる新しい視点から「椅子」というテーマに挑みます。
本展覧会は、主に戦後から現代までの美術作品における椅子の表現に着目するものです。椅子をめぐる国内外の平面・立体・映像作品83点を紹介し、アートのなかの椅子の機能や含意を読み解きます。(公式サイトより)
気になるテーマの展覧会だったので行ってきました!初めての埼玉県立近代美術館も楽しんで来ましたよ~。
展覧会の感想
私たちにとって椅子とは何か。普段そうそう考えることはないようなこんなことを否が応でも考えてしまう、そんな展覧会だったと思います。面白かったです。「アブソリュート」という言葉は「完全の、絶対的な」というような意味を持つそうです。椅子とは…。
(ジム・ランビー 「トレイン イン ヴェイン」公益財団法人アルカンシェール美術財団/原美術館コレクション)
展覧会は5章で構成されています。どの章のテーマも興味深かったのですが、私が好きだと思ったのは第1章「美術館の座れない椅子」でした。
作品として会場に展示されている椅子は椅子なのに座れない。座れないのであればその時点でもう椅子としての役割は失われているのでは…?なんてことを考えながらも、思い返してみると他の美術館の展覧会などでもアートとして椅子が使われていることを見たことがあったような気がしてきました。
会場はマルセル・デュシャンの作品(「自転車の車輪」)からスタートします。デュシャンと言えば便器に自分の名前を書いてこれは芸術作品だ!と言い張った人というイメージが強いです。最初から観る者に問いを投げかけてくる感じがたまりません。こういう展覧会とても好きです。
(岡本太郎 「坐ることを拒否する椅子」 甲賀市信楽伝統産業会館)
椅子=座るもの、という常識(?)を覆そうとするかのような作品の数々。現代アートは「当たり前」を本当にそうなの?と問いかけてくるものが多いと思うのですが、これらもそうなのかもしれません。ちなみに上の写真の椅子は実際に座れます。私も嬉々として座ってみましたがお尻が落ち着きませんでした。
会場にはほかにも草間彌生、オノ・ヨーコといった有名人の作品も展示されていて、この人こんな感じの作品も作ってたのか~という新たな発見があって面白かったです。
(ミロスワフ・バウカ 「φ51x4, 85x43x49」 国立国際美術館)
椅子は権力の象徴でもある、という視点から作品を観る第3章「権力を可視化する椅子」も良かったです。偉い人が座る「玉座」や罪人を罰するために使う「電気椅子」。そうかそういう視点もあるか…と。
椅子と人間
椅子は人間の生活と密接に結びついた家具なんだな、と強く感じました。ほかの家具(例えば机とか)と比べても、ぽつんと置かれている時…人間の姿はなくてもそこに人間の気配を感じる。椅子とはそういう家具なのではないかと思いました。
それは何故か。人間と共にあると言えば机だって同じはず。ですが椅子は何故か特別な気がしてしまいます。
展覧会会場を歩きながら、椅子が象徴的だった2つの作品のことを思い浮かべました。
1つ目は映画「カールじいさんの空飛ぶ家」、そして2つ目はゲーム「Fallout 4」。どちらも過去に感想を書いているのでリンクを貼っておきました。椅子がテーマというわけではありませんが、椅子に人間の人生を感じたという点では共通点があるかも、と思いました。やはり椅子というものに何か感じている人は少なくなさそうです。
カールじいさんの空飛ぶ家/2009年公開 - ユキシロ日記
Fallout 4(フォールアウト4) 感想 - ユキシロ日記
初めての埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館には初めて行きました。北浦和駅から歩いて5分くらい、公園の中にあります。元々椅子を多く所蔵している美術館ということですが、施設内には座れる椅子がたくさんありました。端から順番に座っていく私。写真上のカラフルな椅子が見た目に反して?座り心地最高でした。
おっとこんなところにもいい感じの椅子が!?…ここは館内レストラン「ペペロネ」の一人用席です。こんなに素敵な一人席は初めて見ました。おひとり様万歳。
美術館に行く楽しみのひとつ。美術館飯(めし)!気分が良かったのでコースを注文!これで約2000円はお安いですよ!とても良い時間を過ごせました。
2024.2.17 - 5.12 アブソリュート・チェアーズ - 埼玉県立近代美術館 The Museum of Modern Art, Saitama
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