ユキシロ日記

ゲームのプレイ日記をメインに、博物館、美術館、音楽など。雑多な趣味ブログです。

ゴッホと静物画―伝統から革新へ/SOMPO美術館/2023.10

本展覧会は17世紀オランダから20世紀初頭まで、ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、それをいかに自らの作品に反映させ、さらに次世代の画家たちにどのような影響をあたえたかを探ります。

また本展覧会では「ひまわり」に焦点をあてたコーナーを設け、ゴッホやその他の画家たちによる「ひまわり」を描いた作品を紹介、なぜ彼らがこの主題を描いたかを探ります。(公式サイトより)

実はこの展覧会もコロナの影響を受けていて、本来ならば3年前に開催されるはずだったものです。2023年、ゴッホの生誕170年であるこの年に、改めてたくさんのゴッホ作品に触れる機会を作ってくれてありがとうございます。本当に行けて良かったです。

※長い感想文になってしまいました。いつもより自分語り多めです。

私のゴッホ歴(大げさ)

数年前からゴッホの作品が気になるようになり、今やすっかりファンになりました。いや…ファンという言葉はちょっとしっくりこないかも…。好きな画家?推し?

この展覧会に行って一番感じたのは「私はもう穏やかな精神でゴッホ展を観られないんだろうな」でした。この感覚について後ほど色々書きます。

ここでゴッホの「ひまわり」を初めて観ました。同時に、ゴッホの「ひまわり」は7作品あるということを私に教えてくれた展覧会でした。

絵画を観て心が乱れるという初めての経験をしました。ここで「夜のプロヴァンスの田舎道」の前に立った時の感覚は一生忘れません。この時から自分はゴッホが好きなんだなと思い始め、ゴッホの人生に思いを馳せ始めます。

ゴッホ歴なんて言いながらたった2つの展覧会しかないわけですが、上記の2つから影響を受けていることが間違いないので載せました。図録を買わなかったことを今頃後悔するくらい、どちらも良い展覧会でした。

さてそんな中、3つ目として「ゴッホと静物画」が追加されることとなりましたのでご報告いたします。どういうテンションでこの展覧会の感想を書けばいいのかわからなくなっているため時々おかしいかもしれませんが、こういう感想文は感覚が敏感になっている間に書いた方が良いかなと思うのでそのままいきます(時間が経つと忘れてしまうんですよね…その時の感覚を)。

「ひまわり」と「アイリス」と静物画

ゴッホを軸とした展覧会ですが、当時のヨーロッパの様子や静物画の歴史を辿りつつ、ほかの画家が描いた静物画とゴッホが描いた静物画が入り混じる構成でした。静物画は人物画や歴史画と比べて下位ジャンル…的な評価を当時は受けていたそうですが、私はとても好きです。花が描かれた絵画は単純に美しくて良いし、果物も良いですよね。

(フィンセント・ファン・ゴッホ 「カーネーションをいけた花瓶」 アムステルダム市立美術館)

ゴッホにはあまり見られないような気がする赤やピンクが使われている上の作品、直に観ると本当に綺麗でとても良かったです。私はゴッホの厚塗りが好きですが、この作品もよく見るとかなり厚めに絵の具がたっぷり使われていて、あ~好き~となりました。好き。

(左:フィンセント・ファン・ゴッホ 「アイリス」 ファン・ゴッホ美術館、右:フィンセント・ファン・ゴッホ 「ひまわり」 SOMPO美術館)

なんと言ってもこの展覧会はこの2作品ですね!ほかも良かったですがこの空間の圧倒的パワーと空気。写真撮影可ということもあり人だかりができていましたが、近くから遠くからいろんな角度からじっくり堪能している人が多かったです。

私はどちらも初めて観ました。最高でした。色、塗り方、どれをとってもやはり大好き…。「アイリス」は色落ち?しているそうで実際はもっと紫寄りの色だったそうですが、青に見える今の状態も綺麗だな~と思いました。黄色に青系の色はお互いを潰しそうな感じがするのですが、この作品はどちらの色もそれぞれ目立っていて凄いな…と思います。

私が生きている間にこの2作品が並んで展示されているところを観られる機会は二度とないかもしれません。素晴らしい機会に恵まれ本当に嬉しく思います。

いつかファン・ゴッホ美術館行きたいですね…!!この美術館には別の「ひまわり」がありますが門外不出とのことなので行かないと観られないんですよね…!

それはそうとして、7作品あるゴッホの「ひまわり」の内のひとつが日本にあること、このSOMPO美術館にあるということはもっと世間に知られても良いんじゃないかな~と思いました。ひまわりだけを観ることはできませんが、その時々にやっている展覧会の入場料を払えば必ず観ることができます。凄いことだと思います本当に。新宿駅から5分くらいで行けますよ…!

複雑な感覚

ゴッホの人生をまだそれほど知らなかった(興味を持っていなかった)頃は、作品を観た時の感想が「わ~美しいな~」とか「塗り方が好きだな~」とか、そういうものだったと思います。

ですが、今回ゴッホの作品、特に目玉である「ひまわり」と「アイリス」を観た時、様々な感情が湧き出てきて混乱しました。色の使い方や筆致、厚みがあり生き生きとしている絵の具、やっぱり美しいなとは思って見とれてしまいましたが、それはそれとして別の感情が…以前「夜のプロヴァンスの田舎道」を観た時に似ている…寂しさや悲しみのような不思議な感覚が出てきたのです。

自分でもびっくりしました。「夜のプロヴァンスの田舎道」はゴッホの精神の不安定さがそのまま絵に出ている気がしますが、「ひまわり」や「アイリス」のような明るめというか…パワーを感じるような作品にすら自分は陰の要素を感じてしまうのか…と。

どうしてこんな気持ちになるのか考えてみたところ、自分がゴッホの人生を知ってしまったからだろう、という結論に至りました。昔は知らなかった、だから純粋な明るい気分でゴッホの作品を楽しむことができた。しかし今はいろんな展覧会に行ったり自分で調べたりして、ゴッホがどのような人生を歩み37年という短すぎる生涯を閉じたのか、ある程度知ってしまっています。だからこんなに心が乱されるような…胸が苦しいような感覚になるんですね…。

ゴッホの作品を観る時、作品の後ろに作家の人生を観ている。描かれていないものを想像して観ている。この絵画鑑賞の仕方が好ましいかどうかはわかりませんが、もうゴッホの作品を観る時に彼が辿った人生を無視して観ることは私はできないな、と思いました。どうしても付いてきてしまいます。

その壮絶な人生と共に紹介されることも多い気がするゴッホ。生前は全然作品が売れなかったというエピソードもよく紹介されている印象です。ある意味ドラマチックな人生なので人の心を動かしやすい、というのは確実にある気がします。人は他人の悲劇を好む生き物なので…。

自分の話になりますが、もしかして私はゴッホの悲しみや迷いやある種の狂気に満ちた人生に魅力を感じているのだろうか…?と。私はゴッホが晩年に描いた糸杉をモチーフとした不安定で暗い雰囲気を持つあの頃の作品を好んでいます。しかしそれはゴッホが病んでいなかったら…彼の人生が順風満帆で光に満ちたものだったらあれらの作品は世に出てこなかったかもしれない…。

そう考えるとなんだか罪悪感が出てきます…。ゴッホが好きだなんて言っておきながら、結局私も彼の壮絶な人生に物語性を感じて勝手に色々想像して楽しんでいるだけなのではないか…。古代ギリシアの悲劇作品(誰も幸せにならない辛すぎる物語なのに感動する)が好きなのですが、それと似た感覚でゴッホという他人の人生を楽しんでいるのではないかと…。

それはあまりにも…勝手だな…と思ってしまったわけです。

私とゴッホの今後

この展覧会は随分前から楽しみにしていて、本当に行けて良かったと思っているのですが、こんな気持ちになるとは思っていませんでした。もっとこう…ゴッホ展素晴らしかった~!やっぱり本物は良いですね~!みたいな感想を抱くものだと…。

今ものすごく重い気持ちでこれを書いています。展覧会会場で観ている時より少し経った今の方が精神にきている気がします。あとから効いてくる悪い薬物のようだ…ゴッホの作品は薬物なのかもしれない…。でも観ることをやめられない、ゴッホの作品が好きだから。沼というか中毒になってませんかねこれ。

きっとこの先ずっと、ゴッホの作品を観る時はいろんな感情に心かき乱されながら観ることになるんだろうな…と思います。すごい存在です…。

ゴッホ好きの人って皆さんこんな感じですかね…?ゴッホ好きの人が彼の作品をどういう気持ちで観ているのか気になります。どこだったか忘れましたが、ゴッホの作品を観ると悲しくなるから嫌いだと言っている人を昔見たような気がします。私はそこに魅力を感じてしまい好きになりましたがその気持ちはすごくわかる気がします。多いのかもしれませんね、そういう人。

おまけ(購入したグッズ)

(ショップコーナーの有料手提げバッグがとても良い)

普段展覧会のグッズを買うことはほとんどありませんが、今回は欲が抑えられませんでした。仕方ないよ、ゴッホ展だもの。

ピルケースです。このアイリスは今回来ているアイリスではないです。今まで使っていた味気ないケースと交換しようと思います。外出時持ち出し用なのでお腹の薬と頭痛の薬が入ります。

一目惚れしたお箸置きです。箸置きて。箸置けませんて。鑑賞用確定。

中身を出して並べてみました。観たことがあるひまわりは上に出した2点です。絶対に無理なものもありますが、他のひまわりも生きているうちに観ることができたら良いな~と思います。日本に来てくれ…!

買わないと後悔すると思ったので今回は図録を買いました!!まだ全然読んでいませんが気が向いた時にパラパラ読もうと思います。表紙に少し凹凸があって質感がとても素敵です。

ゴッホと静物画―伝統から革新へ|Van Gogh and Still Life: From Tradition to Innovation|2023.10.17-2024.1.21|SOMPO美術館

 

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