19世紀から現代にかけて、アート、映画、音楽、ファッション、演劇、写真など様々なジャンルで表現されてきた『不思議の国のアリス』の世界とその魅力をご紹介する展覧会です。
英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)を皮切りに世界巡回中の展覧会に、日本オリジナル展示も加えた「へんてこりん、へんてこりんな世界」が2022年夏、六本木ヒルズに出現します。遊び心あふれる没入型展示演出とも相まって、子どもから大人まで「不思議の国のアリス」の世界を心ゆくまで楽しむことができます。
アリス、誕生
小さい頃、「不思議の国のアリス」に触れていたのは間違いありませんが、それがどのアリスだったかはっきり覚えていない…というよりわからない…。私が最初に出会ったアリスはディズニーの映画だったか…それとも絵本だったか…。原作の児童文学ではなかったと思うのですが…。
私のアリスに対する認識はこんな感じです。なので、この展覧会の前半で「不思議の国のアリス」とは何か、という初歩的な部分からスタートしてくれたのは何の知識もない私としてはありがたかったです。原作者のルイス・キャロルが本名でないことも初めて知りました。アリスの原作は言葉遊びが豊富で翻訳するのが非常に難しい、という話をどこかで聞いたことがあったのですが、このペンネームも言葉を入れ替えたり違う言語に変換したりしてできたものということで、そういった遊びを入れるのが好きな人だったんだなぁとしみじみ。
展示物の解説文もペンネームではなく本名のドジソンという名前が使われていました。こういったところからもこの展覧会は「アリス」という作品の紹介ではなく、アリスが生まれた当時の時代背景やアリスに影響された人たち等を広い範囲で取り上げている面白いテーマだということがわかる気がします。
『不思議の国のアリス』の初版発売に至るまでのアレコレが様々な展示物と一緒に丁寧に紹介されていたところが面白く、ほとんどすべての展示物に解説がついていて驚きました。解説をがっつり読むタイプの人は最初の章だけで滞在時間がかなり長くなると思います。初版発売の時に印刷に大失敗した…的な解説があったのですが、別の展示物の解説では「非の打ち所がない素晴らしい印刷技術によって~」と書かれているところがありました。展覧会の解説まで皮肉とブラックジョーク?を使っている!?と感動しました。これがアリスの世界なのかもしれません。
アリスの影響力
ディズニー映画の印象があまりにも強く刻まれていますが、よく考えるとそれ以外でも色々なところでアリスの世界に触れてきたことを思い出しました。ディズニーのアニメ映画のほか、ティムバートン監督の映画は映画館で観ましたし、ダニーエルフマンのテーマ曲も大好きでコンサートで聴いたこともありました。アリスの世界をモチーフとしたゲームで遊んだこともあるし、アリスの世界をイメージした飲食店に行ったこともあります。アリスの世界を表現した音楽もたくさん聴いてきました。
展覧会の後半はそういったアリスの影響力をこれでもかと感じられる構成になっています。映画等の映像作品、舞台、音楽、ファッション、絵画…etc。ありとあらゆるジャンルが思い思いのアリスをイメージし表現してきました。考え方によっては原作から離れた二次創作で解釈違い…のようなこともあるのかもしれませんが、ここまで人々を魅了し続けるテーマ(モチーフ)もそうないと思います。
この先どんなアリスが生み出されるのか。思いもよらないところから新たなアリスが出てくるかもしれません。人々の想像力・創造力を駆り立てるアリスの世界は、これからも消えることなく残り続けるものなんだろうな…と思いました。
現実の世の中もへんてこりんなことで溢れている中、へんてこりんなアリスの物語に触れて現実との共通点を見出したり空想上の世界に浸ったり…。人それぞれの楽しみ方があるところもこの世界の魅力だと思います。ざっくりした感想になりますが創作物って良いなぁと思いました。
特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界― 公式サイト (exhibit.jp)
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