雨をモチーフにした6曲の楽曲はピアニスト・作曲家の水谷健太郎さんの書き下ろし。またの名をものはっぱさん。
上記6曲にプラスして雨音がうしろで聞こえるバージョンも入っていて素晴らしい。
…と書いてみましたが、詳しいことは↓のサイトを見たほうがよい気がします。
曲の感想…の前に
まずは、発売おめでとうございます!このCDが出るということを最初に知ったのは、社会状況もあり鬱々としていた雨の多い季節、今年の6月でした。
クラウドファンディングのプロジェクトとして発足されていたのですが、正直なところこれまでの私はクラウドファンディングというものがあまり好きではありませんでした。ここでその理由を書くと長くなるのでやりませんが、良いイメージがなかったというのが事実です。しかし、このプロジェクトの支援者という形でお金を出してみて、そのイメージがプラスの意味で変わりました。
何故かというと、発足から数日で目標金額達成となったあと11月のCD発売にいたるまでの間、活動報告としてSumika.さんから幾度かのメッセージが届いており、そのメッセージからにじみ出るSumika.さんの誠実で真面目そうなお人柄とこのCDにかける熱い想いがひしひしと伝わってきたからです。
実はこのような形で支援者となるのは2度目なのですが、大昔に支援したプロジェクト(こちらも音楽のCDでした)はこのような活動報告はなかったので新鮮でした。私が持っていたクラウドファンディングに対するあまり良くないイメージを塗り替えてくれたことに、まずは感謝の気持ちを書きたいと思いました。ありがとうございます。
曲の感想
雨の音が入った素敵なミュージックビデオを貼らせていただきました。これだけで雰囲気は伝わってくるのですが、フルで聴き終わった今、このMV…すごく良いところで切れてますね!と思っております(笑)
水谷さん(………なんかムズムズする…これ以降はっぱさんと書いても良いですか…良いですよね…!)のオリジナル曲は以前から聴かせてもらっていますが、どれも一回目より二回目、二回目より~といったかんじで聴けば聴くほど味が出てくるスルメのような魅力があると思っています。
現に今、既に何度もこのCDを聴いた状態でこれを書いていますが、スルメ現象が起き始めています。ちなみに、サイトに載っていた作曲者による楽曲解説を読んだ上で独自解釈を語っています。全体を通して情景が浮かんでくるCDでした。私はそういった景色や物語が頭に浮かんでくる音楽が大好きです。
静かで落ち着いたどこか和を感じる空気感がありますね。絹傘がわからなかったので調べたのですが画像を見たらどのような傘かわかりました。作曲者解説を読むと、この曲は初恋の曲なのだと。しかも悲恋…。さらに絹傘がどういう傘かを踏まえると、舞台は少し昔の日本といったかんじでしょうか。途中で少し強めになる部分がありますが、これは想いの強さと比例しているのかもしれないですね。物語の想像(妄想)が膨らみます。
解説を読む前、タイトルに「君と」とあったというのもあり、登場人物が2人いるなぁという漠然とした物語が頭に浮かんでいました。ソプラノサックスとピアノが一緒にゆっくり歩いているような、そんな印象を受けたからです。サックスだけでもなくピアノだけでもない、2つの楽器による演奏だからこそ出ている良さだと思います。この曲の想像力を刺激してくる感がすごくて聴けば聴くほど好きになっていきます。
ワルツを聴くと踊りたくなるのは人間の性(さが)です。一曲目と似た雰囲気でポジティブな空気が漂っています。はっぱさんのワルツは可愛くなりがち…とてもよいと思います!中間部分、ソプラノサックスのメロディーが上へ上へのぼっていくようになっている(ように感じる)部分、緩急があっていいなと思いました。それにしてもやはり可愛い。 終わり方も好きです。
ここでガラッと雰囲気が変わりました。アルバムの中で一番難解(に聞こえる)のがこの曲だと思います。もしや…と思って調べましたがやっぱりあった!曲名は造語ではなく存在する言葉だったのですね。日本語の奥深さ大好き…この言葉は知りませんでした…勉強になります。
ここまでの3曲は朝~夕方のどこかで降っている雨のイメージでしたがこれは明らかに夜に降る雨。静かで暗い雨ですね…。でもその静けさや暗さが時として安心感をもたらしてくれることがある。私はこの曲を聴いていてとっても心が安らぎます。ピアノの低音と高音の落差、その間にふわっと入り込んでくるようなソプラノサックスの澄んだ音色。眠れない夜に一人で外の雨の音を聴いている、そんなイメージも浮かんできました。アルバムの中で一番落ち着きます。
降ってきたー!!!傘忘れたよー!!!!…というアレ。私も先日突然の夕立にあい雨で髪を洗うという経験をしたばかりです。激しい展開と跳ねるというよりは刺していくような音、速めのテンポは雨から逃れるように走っているようにも感じます。不協和音のように聞こえるところもあり妙に焦ります。
雨が癒しの存在だけでないことは周知の事実、人々にとって恵みであり恐怖である雨の多様な姿を表していて、アルバムとしてこの曲が入っていて良かったと思いました。屋根のあるところに逃げられたんだなと思える終わり方も好きです。
あ、雨がやんだ…。最後に待っているのが虹とは…本当に良い構成ですね…!好きなフレーズがあるのは一曲目だったのですが、この曲もソプラノサックスが歌っている美しいメロディーが心に残ります。壮大な雰囲気は最後の曲っぽさがすごくて、あ…この曲でこのアルバムは終わってしまうんだなという切なさも含んでいるような気がします。
この終わってしまうのが寂しいと感じるのもアルバムならではの良さだと思っています。最後雨があがって終わる雨がモチーフのCDアルバム…素晴らしすぎます。
上記6曲のバックで雨音が入っているバージョンです。このバージョンを聴いて本当にすごいなと思うことがあって、 人って大抵の場合は音楽と自然音を同時に聴くことってないと思うんです。どちらかを聴こうとすれば片方が雑音になるからです。でも、ここに収録されているこのバージョンは音楽と自然音が一緒に聞こえても全く違和感がなく互いに足を引っ張り合っていない、別の言い方をすると一緒に聞こえてくることが当たり前のような、そんな感じがしました。
こんなに雨の音が合うと思っていませんでした。しかもこの雨、一定ではなく曲の雰囲気とマッチして降る量や勢いを変えるという素晴らしい仕事をしています。雨の音をプラスしたバージョンを収録しようと思ってくれてありがとうございます。音楽と音の新たな可能性を感じました。
まだ語るよ
長い時間をかけて作り込んできたことが様々なところから伝わってくるCDでした。演奏者のSumika.さんはもちろん、作曲者のはっぱさん、そしてジャケットのデザインを含めた細部に至るまで何もかもが丁寧なつくりをしています。ネットで音楽を聴いたり買ったりすることが容易にできるこの時代に、CDという物理的なモノを手に取る喜びを久しぶりに感じることができて嬉しいです。
そして、アルバムという「複数の曲からなるひとつの作品」の良さも久しぶりに味わいました。どれか一曲を取り出して聴くのももちろん悪くないですが、1曲目から通して聴くことで得られる満足感のようなものをこのCDから感じました。
改めて、良い音楽を聴かせてくれてありがとうございます。音楽を聴いてこのような充足感を得るのは久々で心がホクホクしています。やっぱり自分は音楽が好きなんだなと思い、さらには音楽を聴いて感じた何かをこうして言葉にすることが好きだということも再確認できました。 願わくば…CD発売記念コンサートがいつか開催できますように。さて、もう一度頭から聴いてきます。
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