ポケモンと工芸、正面切って出会わせたとしたらどんな「かがく反応」が起きるだろう。この問いに人間国宝から若手まで20名のアーティストが本気で挑んでくれました。
ポケモンの姿かたちからしぐさ、気配までを呼び起こした作品。進化や通信、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの記憶をたどる作品。そして日々を彩る器、着物や帯留など粋な装いに誘い込まれたポケモンたち。会場で皆さんを待ち構える作品との出会いははたして...ワクワク、うっとり、ニヤニヤそれともゾクッ?かけ算パワーで増幅した美とわざの発見をお楽しみください。(公式サイトより)
楽しみすぎてチケット予約開始初日に予約し会期初日に行ってきました。金沢の国立工芸館に行くまでの道のりやお金を調べるところまでやったのに結局行けなかった約1年前…。東京に来てくれてありがとうございます!待ってました!!
いろんなポケモン、いろんな工芸
東京会場で初披露の新作を含め約80点の多種多様な工芸作品が展示されていました。どの作品も「ポケモン」という大きなテーマの元作られていますが、同じ「ポケモン」をテーマにしてもこんなに違うのかという驚きと感動がありました。
ポケモン以前に作者の個性の表れ方が凄いんです。高度な技を持つ方々の作品に対してこんなことを言葉にすること自体が失礼かもしれませんが、絶対に量産品には出せない輝きがあるなと思いました。
気に入った作品
どの作品も素晴らしかったのですが、ここで全部語っていくわけにもいかないので断腸の思いで選んだいくつかの作品について書きます。
(吉田泰一郎 「サンダース」)
まずはこちらのサンダース。これは…サンダースですよ!紛れもなく。隣にイーブイやシャワーズ、ブースターもいるのですがサンダースが一番気に入りました。サンダースは針のような体毛に電気が帯びるポケモン。それが完璧に表現されていて感動。ミサイルばりを覚えることも納得。
(今井完眞 「フシギバナ」)
存在感凄すぎる。この作者の方の隣にフシギバナがいて、その子を作品にしたらこうなりましたというあれです多分。実写映画の名探偵ピカチュウを観た時と似たような感覚になりました。生きているポケモンを作品にしたらこうなった…的な。最高すぎる。
(葉山有樹 「超古代ポケモン玉盌」)
凄い。グラードン、カイオーガ、レックウザは赤青緑で並ぶとカラフルになって映えるのですが、色がなくてもこの3匹の迫力が伝わってきます。是非ホウエン地方のミナモ美術館に常設で展示してほしいです。
(須藤玲子 「ピカチュウの森」)
テキスタイルデザイナーの須藤氏は「可愛さ」に惹かれてピカチュウをモチーフに決めたそうです。ピカチュウと言えば森。今や世界的なアイコンと言ってもいいかもしれないピカチュウ、特別大ファンという感じではない私でもピカチュウは可愛くて仕方ないし完璧なキャラデザだと常々思っています。いっぱいいてももちろん可愛い。…あ!色違いの子がいますよ!!!!(大興奮)
(新實広記 「Vessel -TSURARA-」)
ポケモンがテーマの工芸作品展覧会があると聞いて「ポケモンの技」がモチーフになっている作品があるとは思うまいよ。技モチーフってどういうこと?と見るまでは疑問でしたがこういうことでした。凄い。これは「つららおとし」です。そうそうゲームの中でもこういうエフェクトですよね!これが頭上から落ちてくると思うと怖い技かも…威力120くらいはありそう。
(田中信行 「無題」)
こちらの作品は「かげうち」がモチーフとのこと。確かにかげうちだ…相手ポケモンの背後からにゅーっと出てくる時の真っ黒なあれだ…。漆で表現されるかげうちはまさに漆黒…吸い込まれそうな美しい黒…。昔から漆の黒がとても好きです。ゴーストタイプの技の具現化、凄い。
(池本一三 「冒険のはじまり)」右、「殿堂入り」左)
生まれ年から計算すると現在70歳の池本氏。ポケモンだけでなくそもそもゲームをやったことがなかったそうですが、今回ポケモンソード・シールドを手に取り殿堂入りまでプレイしたのだとか。その体験が作品になったものがこちらです。すごく好き…。ポケモンに冒険は欠かせない要素です。共に歩んだポケモンたちが思い出になっていくのです。私も剣盾を最初にプレイした時はネイティオが旅パにいたので嬉しくなりました。ネイティオ好き。
(桂盛仁 帯留・ブローチ ブラッキー「威嚇」「眠り」「立ち姿」)
人間国宝が作る先品に選ばれたブラッキーに乾杯。特徴的なブラッキーの模様も、かっこいい赤い目も、塗ったのではなく全て金属からできているとのこと。できれば(できませんが)手に取ってじっくり見てみたかった作品のひとつです。それにしても良い色。
(桝本佳子 「リザードン/信楽壷」ほか)
壺とほのおタイプのポケモンが合体している!?桝本氏は、炎は焼き物と切り離せない要素だとしてほのおタイプのポケモンをモチーフにしたいと思ったそうです。焼き物は焼いてみないと最終的にどうなるかわからない部分も多い気がするのですが、完成作品を見るとものすごくしっくりきますね。特に私が好きだと思ったはリザードン。迫力があってカッコよくて色も良い。
少し残念だなと思ったこと
ポケモン工芸展、コンセプトはすごくすごく素晴らしい企画で本当にありがとうございますと言いたいのですが、ちょっと残念だなと思ったこともありました。
それは、解説(キャプション)です。
(福田亨 「雨あがり(アゲハント)」、「Floor(アリアドス)」)
着色は一切しておらずすべて木から作られている作品ですが、会場の壁に書かれている解説ではそのことに触れられていませんでした。作品の解説をしてはいるのですがなんだか…そこじゃなくて!と言いたくなるような文面で(偉そうにすみません)、この作品の凄さが伝わらないのでは…と余計な心配をしてしまいました。ご本人のSNSを貼らせていただきます。
https://x.com/TF_crafts/status/1658772655389163523(アゲハント)
https://x.com/TF_crafts/status/1648245763867303936(アリアドス)
もしかすると好みの問題なのかもしれないのですが、これだけでなく全体的に解説の文章がなんというか…しっくりこない感じで、作品の解説かと思えばかなり感覚的なことが書かれていたり、伝聞系(~のようです、みたいな書き方)の文も多くて、個人のブログなら良いですが展覧会会場で多くの人に読まれる解説がこれで良いのか…?と思ってしまいました。
私は今回図録は買いませんでした。買っていればもっとがっつりした解説(?)が読めるのかもしれません。ただ、音声解説もない展覧会でこれだけだと…せっかくの工芸品の良さが伝わらないのではないかと思いました。
どの作品もパッと見ただけで「なんか凄そう」というオーラを放っているのでなんか凄いということは誰もがわかると思うのですが、それがどう凄いのかがわからない。会場の最後に制作過程のムービーが少しだけ用意されていました。こういうのを全作家分用意してほしかったです。贅沢ですみません。
ここに名を連ねる作者たちは工芸品を生み出す技術を持った人たちですが、その凄さも素人が作品を観ただけではわからないと思います。せっかくの素晴らしい企画なのに色々もったいないな…と感じました。
そしてもうひとつ。似たようなことですが作品解説に英語がなかったことが少し残念かも…と思いました。外国人の鑑賞者、すごく多かったです。ポケモンを通して日本に伝わる伝統工芸を知ってもらえる良い機会、やっぱりちょっと残念に思います。
このサイトにポケモン工芸展のことが書かれたコラムがいくつか掲載されているのですが、すごく良いコラムなので良かったら是非。
会場のパネルに載せられる解説文は文字数もあるだろうし色々大変だとは思いますが、展覧会における解説文って結構重要だと思うんです。ただ、解説がさらっとしていた分会場内があまり混んでおらずみんな一か所に止まらず進んでくれていたので、快適な鑑賞体験になったというのも事実。バランスが難しいですね…。
喫茶 ポケモン×工芸展
展覧会のコラボメニュー大好き人間、ポケモン工芸展とのコラボがあると知り大歓喜。私が行ったのはお昼より前の時間で少し並んだら入れましたが、お昼時はやはり混むようで整理券制になっていました。休日はもっと混むかもしれません。
ということで色々いただいてきましたよ~コラボメニュー大好き~。
二度とない機会かも…と思い奮発して「特製クロックムッシュ」「特製ピカチュウラテ」「栗とおいものピカチュウ和ッフルパフェ」を注文。どれも美味しくて大満足でした!前期と後期で一部メニューが変わるそうですよ。
(桑田卓郎 「カップ(ピカチュウ)」)
会期中はずっと注文できるメニューのひとつである和ッフルパフェ。とても美味しかったのですが桑田卓郎氏の作品をイメージしているのでチョコが器の内側にくっついているんです。このチョコが!全然器から離れてくれなくて困りました!!
汚くして申し訳ないですがスプーン、フォーク、ナイフ、あらゆるものを使ってしまいました…。最終的にナイフでチョコを削り取る方法が良いことに気付いたのでこれからこれを食べる方はそうしていただければ…と思います。チョコ部分を残している人もいました…もったいない…削り取ればいけますよ!!
グッズも買いました
グッズはこれだけ…ポーチを購入しました!外側が固くて丈夫で良い感じ。ゲームの何かを入れようと思います。早速タッチペンがスルッと収まってくれました。
グッズ売り場は展覧会チケットを持っている人しか入れないやり方で、それほど混雑もしていなかったのでゆったり見て回れると思います。
ポケモン×工芸展―美とわざの大発見― 特設ウェブサイト
ポケモン×工芸展 ―美とわざの大発見― 東京会場
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