
大規模工事を終えて今年2月に全館リニューアルオープンした横浜美術館!約6年ぶりに行ってきました!
佐藤雅彦展

TVコマーシャル、教育番組、書籍、ゲームなど、さまざまなメディアを通じて発信される斬新かつ親しみやすいコンテンツにより、1990年代以降のメディアの世界を牽引してきた佐藤雅彦。ひとりの人間がこれほど多種多様な作品群を生み出したことに、誰もが驚くことでしょう。
佐藤の創作活動の軌跡をたどる世界初となるこの展覧会では、佐藤が表現者/教育者として世に送り出してきたコンテンツを一堂に紹介し、「作り方を作る」という思想に裏打ちされた独創的なコミュニケーションデザインの方法論を明らかにします。(公式サイトより)
6月末から始まった企画展ですが、スタート直後から大人気で凄い混雑になったそうで、現在は日時指定チケットが導入されています。11/3まで会期があるとはいえ今後もおそらく大混雑なので、行くつもりの方は早めに日程を抑えておくことをおすすめします。
私が行った時ももちろん大盛況で、老若男女(本当にこの言葉の通りだと思いました)で賑わっていました。わかります、この展覧会すごく…面白そうだもの!!!私もそう思った一人です。

人の名前がそのまま展覧会名になっているタイプの展覧会は、その人の頭の中を覗いていくような構成になっていることが多いと思います。これもまさにそんな感じで、佐藤雅彦氏が生み出してきた様々なものを見ながら、彼の脳内を見学させてもらっているような、そんな気持ちになりました。
ちょっと独特な感じがする会場マップから既に佐藤氏の世界を感じさせてくれます。

会場は横浜美術館の開放的な展示室を思いっきり使っていて、広々とした空間のそこかしこに佐藤氏が手がけたCMや実験的なムービーが流れていたり、いろんな模型が置いてあったり、歩いているだけでもなんだかワクワクするような空間でした。
みんな大好きピタゴラスイッチの実物装置もいくつか展示されていて、小さい頃よく見ていたピタゴラはこのくらいのサイズ感なのか!とわかって感動。ピタゴラ部屋はやっぱり大人気で、大人も子供も夢中にさせるピタゴラの凄さをひしひしと感じました。栗コーダーカルテットの音楽も大好き。
ですが、心構えとして知っておいた方がいいかもしれないこととして…、昔のCM集や佐藤氏自身によるものづくりの解説等、ムービーが多く用意されています。CM集は1回30分超えの大ボリューム。もちろん途中から見るのも途中で抜けるのもありですが、がっつり全部ムービー見たい!という場合、ムービー鑑賞時間だけでも90分は見ておいた方が良さそうです。
みんな(特に大きなお友達)昔のCMが懐かしいのかムービールームに入り浸っている人もいました。それほど「過去に見た印象に残っているCM」は強く人の心に刻まれるもので、そう簡単には忘れないんだな…と思うと同時に、人の記憶に残る映像をいくつも手掛けた佐藤氏の手腕にも驚かされます。

近年、テレビはどんどん廃れている(ように私には見える)メディアで、CMと言っても昔とは色々やり方が違うだろうし、テレビ番組のあり方も昔とは違うんだろうなと思います。

(↑2029年、伊豆に記念館ができる予定とのこと。楽しみですね!)
佐藤氏はもう自身が何かを生み出すという段階は超えたところにいるというか、今後は自身の軌跡を残すことになっていくのだろうと思いますが、現代のメディアや広告をどう考えているのかは気になるな~と思いました。
会場を見ていて、ひと昔前の…メディアとしてのテレビが強かった時代だな~これは、と思ってしまったのも事実。最近は「話題になる広告=炎上」みたいなところがありますからね…。今後佐藤氏が生み出した様々なもののように、多くの人に長年愛され後世まで語り継がれるようなインパクトのあるCMや番組は出てくるだろうか…と、思って少し寂しくなりました。

この展覧会はCMや教育番組の振り返りだけでなく、後半は佐藤氏が大学で教鞭をとっていた時に学生たちと取り組んでいた実験や活動の紹介もあります。記号、ルール、算数、物理など、こっちの方が楽しい人も多いかもしれません。
何かを生み出す活動を日常的に行っている人も刺激を受けるだろうな~と思いました。人間の発想とは素晴らしいもので、いろんな人に対して言えることですが、新しいものを生み出すことの凄さと尊さを感じられる展覧会でした。
考えたこと
想像していた通り楽しい展覧会ではあったのですが、私には難しいなと感じたところもあり…。佐藤氏は「本当は複雑で知識がないと理解できないようなことを極限まで単純にして見せるのが上手」な方なんだろうな、と思いました。
ピタゴラスイッチなんかもそうで、見ている分にはただただ楽しい映像なんですけど、実際は計算に計算を重ねて設計されているものなんですよね。数学や物理が絡んでいる。
佐藤氏の略歴を見ていて思ったのは、この人は凡人ではない、ということでした。天才と言うつもりはありません。数々の実績は本人の努力があってのことです。しかし、時代がその時に求めていたことと彼自身の能力、周りの環境、すべてが見事にマッチしたんだろうなと思ったんです。
到底私にはわからない、辿り着くことのない世界だな…とちょっとだけ思ってしまったんです。わかりやすく説明してくれているのはわかります。それでも掴み切れないんです。脳の出来と積み重ねてきた勉強の量が違うんだろうな…と思ってしまいました。
すごく楽しかったけれど何も理解できなかったような、そんな不思議な気持ちになった展覧会でした。
久しぶりの横浜美術館
6年ぶり!本当はリニューアル直後の企画展に行きたかったのですがタイミングを逃し続けて行けず…。やっと行けました!コレクション展や小規模な企画もざっとですが観ることができて良かったです!

(ジョアン・ミロ 「花と蝶」 横浜美術館蔵)
横浜美術館は所蔵している作品がとても多く、有名どころの作家から若手作家、写真作品や現代アートまで色々。その時々に展示される作品は違いますが、今回久しぶりに出会えた作品もあって満喫できました。

(ルネ・マグリット 「王様の美術館」 横浜美術館蔵)
マグリットのこちらの作品。不可思議で好きです。

(イサム・ノグチ 「 下方へ引く力」 横浜美術館蔵)
これは!昔横浜美術館に行った時に初めて観てその後東京都美術館でやっていたイサムノグチ展で再び観た作品!3度目の対面です!お久しぶり!リニューアル後はずっとここにあるのでしょうか…?展示室の外…廊下に近い場所に展示されていました。

これは2019年の写真。そんなに何度も行ったことがあるわけではないからか、リニューアルした部分がどこなのか私はあまりわかりませんでした。元から綺麗な美術館だったと思います。天上が高く開放的でとても好きです。
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