本展では、ゲームエンジン、AI、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アート約50点を紹介します。
そこではデジタル空間上のさまざまなデータが素材となった全く新しい美学やイメージメイキング(図像や画像を作ること)の手法、アバターやキャラクターなどジェンダーや人種という現実社会のアイデンティティからの解放、超現実的な風景の可視化、といった特性が見られます。
現実と仮想空間が入り混じる本展は、人類とテクノロジーの関係を考えるプラットフォームとして、不確実な未来をより良く生きる方法をともに想像する機会となるでしょう。(公式サイトより)
楽しみにしていました。
相変わらず(?)タイトルを見ただけではどんな内容なのか全然わからなくて森美術館らしいな~(※私の偏見です)と思いつつ、「新しいアートを見せてもらったな」というのが行ってみた感想として強く残りました。
新しいアート
会場に入って最初に見えるのは「マシン・ラブ展をもっと楽しむための用語集」。
「生成AI」といった最近よく耳にするようになった用語もありましたが、聞きなれない用語も多々。最新テクノロジーに日常的に触れている人ならピンとくるものが多いのかもしれません。
ただ、これらの言葉や意味を知らなければこの展覧会が理解できない…というようなことは全くないと私は思ったので、適当にスルーしても問題はないと思いました。というのも、知識がなければ理解できないアート作品ってどうなんだろう…という思いが私の中にあって、知識があってもなくても何か感じるものがある、それがアートなのではないかと。とはいえ…結局時と場合と人によるんですけどね!
(ビープル 「ヒューマン・ワン」)
ビープル(本名:マイク・ウィンケルマン)はウェブで活動するデジタルアーティスト、グラフィックデザイナー、アニメーターであり、政治と社会を風刺する作品を制作している。
《ヒューマン・ワン》(2021年)は回転するビデオ彫刻であり、メタバースで生まれた最初の人間が、変わり続けるデジタル世界を旅する様子を表現している。(公式サイトより)
初めに私たちを迎えてくれる作品はこちら。不思議な作品でした。ぐるぐる回る箱?に映っているのはいろんな景色を歩き続ける人?の姿。現実と地続きなのではないかと思うような綺麗でアニメーションっぽくもある映像、とても引き込まれました。
(キム・アヨン 「デリバリー・ダンサーズ・スフィア」)
《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022年)は、コロナ禍で注目された自宅等への配達サービスのため、他者と接触せず、都市における不可視の存在として最短距離、最短時間に挑む女性配達員が主人公である。配達経路を移動する迷宮、フラクタル構造のような軌跡は、異次元へと見る者を誘う。(公式サイトより)
六本木の街を53階から眺めることができる森美術館の展示室、今回の展覧会はこの作品がそこにありました。(私はこの部屋にどんな展示が来るのか毎回楽しみにしています)
25分の映像作品ですが、ちょうど始まったタイミングから観ることができました。そのおかげもあって、この作品が見せる現実のようなそうでないような不思議な世界観に見入ってしまい25分間をここで費やしました。(後半時間がなくなって駆け足になった原因はきっとこれ)
(ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル 「帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500年以降」)
ケイト・クロフォードは、AIとその影響に関する研究を国際的にリードする研究者。情報通信技術(ICT)の研究者でアーティスト、SHARE財団の共同設立者のヴラダン・ヨレルと協働し、リサーチとデザイン、科学とアートにまたがる調査を視覚化した《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500年以降》(2023年)などを制作している。(公式サイトより)
これ、凄かったです。16世紀以降のテクノロジーと権力がどのように絡み合ってきたか…ということをまとめた作品なのですが、テクノロジーと人間の関わりについて否が応でも考えさせられる…考えないわけにはいかない…という気持ちになってひたすら脳が疲れました。
テクノロジーは突然出てきたものではない。歴史がある。最新技術ばかりが注目されがちな昨今ですが、過去との繋がりを考えることも大事だよな…と改めて思いました。
現実とテクノロジー
仕方ないとはいえ、映像作品が多い展覧会はどうしても時間が必要になります。森美術館はデフォルトで夜10まで開館している素晴らしい美術館ですが、今回初めて夜10時まで滞在しました。夜8時くらいに入ったのですが…全然足りなかったですね…映像作品が長いから…!!
というちょっとした嘆きは置いておいて。
現代の様々なテクノロジーを駆使して生み出されたたくさんのアートに触れ、いよいよ現実と仮想世界・デジタルの世界に境界がなくなってきたな、と感じました。どこからが現実でどこからがそうでないのか、すごく曖昧なんです。
もはやこれらは分けるものではなく、共にあるのが当たり前で境界なんてないのでは?と思いました。
アートとは何か?という問いも興味深いです。何かを表現しようと思った時にテクノロジーを利用する。それはもう珍しいことでもなんでもないんだなと、ここで観たたくさんの作品を通じて感じました。
最先端テクノロジー…特に生成AIについてはその存在の是非や利用方法について常に争いが起きて荒れている印象があります。
この展覧会、そういったことに対して問題提起するような感じではなく、あくまでアートを見せるもの、といった印象を受けました。現実とテクノロジーとアート、そして人間。自分があとどれくらい生きてどこまで技術の発展を見られるかはわかりませんが、これからこの世界がどうなっていくのか、世界の隅の方で見ていたいなと思いました。
マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート | 森美術館 - MORI ART MUSEUM
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会
アナザーエナジー展
STARS展:現代美術のスターたち—日本から世界へ
未来と芸術展
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