美術館の展示室に整然とならぶ美術品、それらは、今日誰もが鑑賞することのできる公共的なものとなっています。ですが、その美術品が生まれた時のことを振り返ると、それは邸宅の建具として作られたり、プライベートな部屋を飾るためにえがかれたりと、それを所有する人との関係によって生み出されたものであることが分かります。
この展覧会では、モネ、セザンヌ、藤田嗣治、岸田劉生、琳派による作品や抽象絵画まで、美術品がどのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのか、その時々の場を想像し体感してみます。(公式サイトより)
作品そのものだけでなく、その周囲、歴史、人との関わり…。いろんな事柄に思いを馳せることができるとても良い展覧会でした。
美術館の空間
4月にブランクーシの展覧会に行った時、次の展覧会がこれだと予告してあって、ずっと楽しみにしていました。わかるんです、自分こういうの好きそうだな~って!
美術館という施設が大好きなのですが、それは何故だろうと考えた時、芸術鑑賞が好きというのももちろんありますが、それ以外に「美術館の空間」が好きなんだということは自分でも常々感じていました。
同じ美術館でも展覧会によって展示エリアの雰囲気はガラッと変わります。展示品の並べ方、照明、動線はどうなっているか。これらをひっくるめた「空間」を味わうのも美術館の楽しみの一つだと思います。
そんな美術館の空間が好きな私、この展覧会、当然のようにクリティカルヒット!
だって空間に注目してるんですよ!好きに決まってますよそんなの!すごい良かった!!!
空間に入る
(円山応挙 「竹に狗子波に鴨図襖」)
室内空間の一部として描かれた絵。この絵が飾られていた部屋はどんな部屋だったのでしょう…と思いを馳せながら進んでいく鑑賞エリアの一部に、円山応挙の襖絵がありました。なんとこちらの襖絵、このために用意された畳にあがって鑑賞することができます!!
いろんな展覧会に足を運んできましたが、靴を脱いで畳の上に座ったのはここが初めてです。この展覧会ために用意された鑑賞スペース。今後行く予定がある人は是非靴を脱いであがってみてほしいです。畳に座って見る襖絵はとてもよいものでした。
こ、この印象的な証明は…ブランクーシ展でも見たやつ!!!空間に思いを馳せる展覧会というだけあって照明もすごい…!ブランクーシの時は真っ白でしたが、今回は江戸時代の室内のイメージということでほかエリアより少し暗くしてありました。これがこだわりというやつですか。感動。
みんな大好き応挙犬。スマホで拡大して撮影してみました。可愛すぎやしないか。なんでそんなにころころなの?餅なの?
額縁と作品
(藤田嗣治 「ドルドーニュの家」)
展覧会の後半、作品と額縁の関係に迫るコーナーがありました。…すごい良かった。額縁は画面と空間を視覚的に繋ぐ重要なものだと解説に書かれていました。作者自身が強いこだわりを持っていたり、時を経て変わったり。この作品に合う額縁はどんなデザインか…そんなことを考えながら決められたと思うと額縁まで楽しく鑑賞することができる気がします。
上の写真は藤田嗣治の作品です。黒と白と薄い茶色で構成されたちょっと不思議な作品に見えますが、額縁も最高すぎてお気に入りになりました。
(左:パブロ・ピカソ 「ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙」 右:ジョルジュ・ブラック 「円卓」)
国立西洋美術館で以前やっていたキュビスム展でも重要人物だったピカソとブラックの作品は並んで展示されていました。この時期の作品の額縁はこんな感じのものが多かったそうです。良いですね…黒。
(レンブラント・ファン・レイン 「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」)
良すぎる…。作品の暗さと額縁の暗さが見事にマッチしているだけでなく、作品より額縁の方がでかいという…何これ超好き…。
ほかにも良い額縁がたくさんありました。中には額縁なんて必要あります?とでも言うかのようなNO額縁の作品もありました。いらないなら仕方ない。
まとめのような何か
今回の展覧会も3階にわたるフロアをすべて使った大ボリュームな内容でした。
が、解説はこんな感じ↑で親しみやすく、作品の解説よりもその周囲の解説がほとんどだったので、絵画や画家などに詳しくなくても全く問題なく楽しめると思いました。色々なことが新鮮でフロアを歩いていてすごく楽しかったので、多くの人にお勧めしたいです。
(ヴァシリー・カンディンスキー 「二本の線」)
絵画がある空間って良いですね。時に非日常的な気分になったり、落ち着いた気持ちになったり、寂しくなったり…。私にとって感情を動かしてくれる場所である美術館、やっぱり大好きです。
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