イタリア人の両親のもとギリシャで生を受けたジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。
1910年頃から、簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、歪んだ遠近法、脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって、日常の奥に潜む非日常を表した絵画を描き始めます。
後に「形而上絵画」と名付けた1910年代の作品は、サルバドール・ダリやルネ・マグリットといったシュルレアリスムの画家をはじめ、数多くの芸術家に衝撃を与えました。1919年以降は伝統的な絵画技法に興味を抱くようになり、古典絵画の様式へと回帰していきます。それと同時に以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品も頻繁に制作するなど、90歳で亡くなるまで創作を続けました。(公式サイトより)
ポスター等のビジュアルを見て惹かれたので行ってきました!
初めてのデ・キリコ
美術館に行くのが好きで絵画鑑賞も好きな割にアーティストの知識は全然ないので、このアーティストも初めて知りました。展覧会のメインビジュアルになっている作品に惹かれ、もっと色々観てみたいと思ったのがきっかけです。
絵画だけでなく彫刻や舞台美術などを含み、およそ70年にわたる活動を振り返るような展示構成となっています。初期から晩年に向けて作風がどのように変わっていったのか、章ごとに区切られているおかげで、時代により雰囲気の違った作品を生み出していく過程(?)のようなものがわかって面白かったです。
私が好きだと思ったのはセクション2で取り上げられていた「形而上絵画」と、最後のセクション「新形而上絵画」でした。
デ・キリコ本人が自らこの言葉を使ったとのことですが、それにしても形而上絵画なんて言われてもよくわからないですよね。この言葉だけでとっつきにくいと思われてしまいそうです。
「形而上」とは、形を持っていないもののこと。哲学用語としては感覚を超えたもの…とかそういう感じの意味を持つ言葉です。私はこの展覧会に行くまで全く知りませんでしたが、デ・キリコは哲学者のニーチェに興味を持っていたそうで、ニーチェの著書もよく読んでいたとか。関係あるかわかりませんがデ・キリコの出身地はギリシャで、初期の作品にはギリシャ彫刻のような柱?もよく描かれています。元々哲学的なことに興味があるタイプの人だったのかもしれません。
そうかニーチェが好きか。そうかそうか~。ニーチェというと世界に対してどこか悲観的というか諦めているというか、その上で自由に生きよう!みたいな、そんなイメージがあるのですが(適当すぎてすみません)、デ・キリコの作品の多くからなんとなく悲観的な空気が漂っているような気がするのはこの影響だったりするのでしょうか。
不思議な遠近感、謎のモチーフ等、意図が読めない作品も多く、観ていて不穏になる。でもなんだか惹かれる。絵画から尖った冷たい空気が感じられるような気がして、そんなところも私は好きでした。
作家として活動を続ける中、途中で画風を変えて色々なことに挑戦したデ・キリコ。私は変わる前の作品群の方が好みでしたが、これら全部含めて最晩年の「新形而上絵画」と呼ばれる作品群に繋がっていくのがよくわかって、最後の方の作品なんかは特に今までの経験全部盛り込みました!的な激熱展開になっていて、人が重ねてきた人生にはすべて意味があるんだな…と思ってちょっと感動しました。
デ・キリコへの理解が全然足りていない自覚があるのであまり語ることはできませんが、また一人良い作家を知ることができて良かったです。
おまけ
東京都美術館内のレストランミューズに初めて行くことができました!ここも周辺美術館や博物館と同じように上野精養軒が監修しています。注文したのはデ・キリコ展にちなんだ特別コラボメニュー!!大変美味しかったです。形而上的な味がしました。
------------------------
美術館関連の感想まとめは【こちら】からどうぞ