2022年の初博物館はこちらになりました!ポンペイと聞いて私が知っていたのは、火山噴火の被害で消滅してしまった都市…ということだけでした。
紀元後79年、イタリア、ナポリのヴェスヴィオ山噴火により、厚い火山灰の下に埋もれた都市ポンペイ。約一万人が暮らした都市の賑わいをそのまま封じ込めたタイムカプセルともいえる遺跡は、1748年の再発見以来、多くの人びとを魅了しています。
本展はポンペイから出土した多くの優品を所蔵するナポリ国立考古学博物館の全面的な協力のもと、日本初公開を含む約150点の名品を紹介。高度な文明と豊かな暮らしを今に伝える貴重な出土品や映像を通して、ポンペイの繁栄とそこに生きた多様な人びとの実像に迫ります。(公式サイトより)
そこにいた
全然知らなかったのに変な話ではありますが、昔からポンペイと聞くと、なんとなくしんみりした気持ちになっていました。この展覧会に行く前までもそうで、どうしても「自然災害で消滅した悲劇の都市」という印象がありました。事実ではあるのでこれもおかしいものではないと思いますが、そこに人がいて文化があって…というようなことは考えたこともありませんでした。
ちらしやポスターなどで使われている「そこにいた」という言葉。たった5文字ですがこの展覧会をよく表している良いキャッチフレーズだと、鑑賞を終えた今思います。ただ古代都市がそこにあったというだけではない、人間がそこで生きていたということを強く感じることができる良い展覧会でした。
古代ローマの文化と言えばわかりやすいかもしれませんが、ポンペイにはそれだけでなく独自の文化もあったそうです。それにしても改めて間近で見る彫刻は凄かった…!石とはとても思えない…体の柔らかさ(特に女性の像)を石に感じるなんて…!!!
古代都市の文化
全然知らなかったのですがモザイク画というのも凄かったです。石やガラスのかけらを敷き詰めて作っているそうなのですが、特に裕福な家の床(床!)はこういったすさまじいモザイク画がたくさんあったようです。これが出土品とは…なんだか感慨深いものがあります。
他の都市と似たところもありますが、裕福な人がいて奴隷がいて、街には大浴場や円形闘技場がありパン屋さんがあり…いろんな人たちが暮らしていたんだなぁと思うとポンペイという都市に対する自分の認識が変わっていくような気がしました。ヴェスヴィオ山の噴火という歴史の一部として捉えるだけでは感じることができない何かを確かに感じました。
会場の作りも動きが合って面白かったです。ただ展示物が飾ってあるだけではなく、当時の邸宅の再現があったり、出土品が邸宅のどのあたりから出てきたかわかるようなムービーもあったりと、見せ方も工夫されていました。
遺跡と発掘と今
遺跡=ロマン、と普段は思っていますが、このポンペイに関してはロマンというようなワクワク感のある言葉を使うことが憚られます(私の場合)。ポンペイ遺跡の発掘も昔は美術品を発掘するための宝さがしのような感覚だったそうですが、現在は遺跡の保護や出土品の保存や修復に力を入れているとのことでした。
なんでもそうですが、遺跡の価値を守りながら研究を続けている人たちの存在に敬意を表したいです。彼らがいなければポンペイの文化は灰に埋もれたままで、遠い時代の遠い場所で生きている私がこのようにかつての文化を目の当たりにすることなんてできませんでした。今日この展覧会に行けたのも、もしかしたら奇跡なのかもしれないです。
悲劇の都市という印象を持っていたと初めに書きましたが、ポンペイと聞くと人の死がちらつくだけだった以前とは違い、今はそこで生きていた人たちのことを鮮明に思い描けるような気がします。ポンペイに対する解像度が上がったということだと思います。
かつてポンペイで生きていた人たち、一昼夜にして都市ごと灰に埋もれる…無念だったことでしょう…。彼らが「そこにいた」ことを、私たちが語り継いでいかなければ…!と、大げさかもしれませんが思いました。
特別展「ポンペイ」 Special Exhibition POMPEII (pompeii2022.jp)
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