国宝「鳥獣戯画」は、擬人化した動物たちや人びとの営みを墨一色で躍動的に描いた作品です。本展では、展覧会史上初めて、甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を、会期を通じて一挙公開します。加えて、かつて4巻から分かれた断簡、さらに原本ではすでに失われた場面を留める模本の数々も集結します。まさに<鳥獣戯画のすべて>をご堪能いただける、またとない機会です。(公式サイトより)
初めての鳥獣戯画
存在は知っていましたが、今思えばそれしか知らなかったんだなぁと、この展覧会を体験して思いました。
まず、4巻からなるものだということを初めて知りました。甲乙丙丁すべての巻の全場面をこのように展示する展覧会は史上初ということで、二度とないかもしれない貴重な機会、自分の目で鳥獣戯画を見るという経験ができて良かったと心から思います。
動く歩道に乗っての鑑賞
4巻の中でも一番有名な甲巻(ウサギやカエルのアレ)はこの展覧会のために用意された動く歩道に乗っての鑑賞でした。新鮮な体験…!欲を言えばもっとじっっっくり見たかったのですが、そうなると同じ場所から動かない人も出てきそうなので、このやり方はなかなか良いのではないかと思いました。
そもそもこの展覧会自体が予約制で前もって予約していないと入れません。トーハクで何年か前に同じような鳥獣戯画展をやっていましたが、その時はすさまじい混雑だったと行った人から聞いた記憶があります。賛否はあると思いますが、鳥獣戯画展のような激混み必至な展覧会は今後もずっとこのスタイルが良いなぁと個人的には思っています。
自分の目で初めて見た鳥獣戯画。色はなく墨だけで描かれた作品。筆の使い方なのか(?)描き方が豪快のようで繊細でもあり、動物も人も生き生きとしていて物語があり、これが国宝だとかそういうのを全部抜きにしても見ていて楽しい作品だなぁと思いました。やっぱり甲巻が一番印象に残っています。カエルの動きの豊かさが好きです。
断簡と模本
鳥獣戯画は今ある形が当時から変わっていないのではなく、元々はもうちょっといろんな場面が描かれていたそうです!知らなかった!本体から切り離されて保管されていたりもしたらしく、そのような分かれている場面が描かれたもの(断簡)の展示がありました。
さらに、後の時代に鳥獣戯画を模して描かれた作品(模本)が、失われてしまった本物の鳥獣戯画の場面を探る重要な手がかりとなっている、ということも学びました。
これ、感動しました。本物を真似て描く行為って所詮真似事…のような見方をされることもある気がするのですが、そんな真似して描いたものが本物を知るための材料となる。本物ではないものが本物を今の時代まで伝えている…。文化や芸術の奥深さを感じずにはいられません。
高山寺と明恵上人
第3章は鳥獣戯画を保管する高山寺と鎌倉時代の僧・明恵上人にスポットをあてた展示となっていました。鳥獣戯画そのものを見せるだけではなく、こうしてその周りにいた人物や時代にも触れてくれる構成はとても良いなと思いました。
普段は公開されていないという重要文化財の「明恵上人坐像」も印象的でしたが、明恵上人が記し続けていたという自分が見た夢について書いた日記など、面白いものがたくさんありました。
その他本館の企画など
トーハク本館では「鳥獣戯画展スピンオフ」という企画がひっそりと開催されていました。鳥獣戯画展の関連企画として動物に注目し、動物をモチーフとした世界各国の作品が展示されていました。写真は馬の埴輪。
そしてもうひとつ、こちらも本館の「動物めぐり」という企画です。本館にある多くの展示物の中でも動物をモチーフとした作品は解説のところでわかるようになっているよというものです。
ゆるい動物たち。
こういうの好きです。
カエルやトカゲたち。昔から人々は動物と共にあったことがわかります。
あとがきのような何か
トーハクだけでなくいろんな博物館や美術館がまたしても休館する事態になってしまいましたね…。どうしようもないことだから…と無理やり納得しようとしてはいますが、1年前と比べてこのような施設は入場制限をはじめ、できる限りの対策を講じているように思います。
博物館や美術館はペラペラ大声で大勢で喋る人もほとんどいないし館内での飲食は禁止です。リスクはかなり低い場所だと思うのですが…言っても仕方ないですね。寂しくてつい…。また自由にふらっとこのような施設に行ける日が来ることを願っています。
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